拒絶
ゆっくりと目を開けると
5m程先に男の背中が見えた
薄暗い中で月の光が窓から漏れて
居間の様子がボンヤリと
照らしている
ここは自宅だという
事に気が付いた
男が右腕で振り上げ何かを
握っている
艶のある赤い棒を
ドッカ、ドッカと
鈍い音を立てて何かを叩いてる
私は台所で椅子に座っていた
身体はキツくロープで
縛れていて身動きが取れない
男は、何を叩いているんだ?
何とかこの身体に
巻きついてるロープを
外せないかと思い
身体を揺らしながら動かすと
ギシギシと椅子が軋む音が漏れた
男が軋む音に気がつき
私の方に振り返えた
男の顔は、目の所に
丸い穴が2個空いたズタ袋を
被っていて
誰だが分からず
2つの穴から此方を擬視する
冷たい目が見えて
私を睨んでいる
手に持っていたのは
赤い何かが滴り落ちている
鉄パイプを持っていた
男の奥から微かな声が聞こえ来た
「た.....す.....けて...」
男は横にずれ
赤い鉄パイプで
叩いている物を私に見せた
私と同じで椅子に座され
全身ロープで縛られて
顔は、ペンキで真っ赤に
塗ったように赤く
まるでお面を被っているみたい
顔が二倍ぐらいに
大きく腫れ上がっている女性がいた
顔の原型をとどめていないが
妻だと直ぐに分かった
胃から戻る物を感じ
抑え切れず口から出て
自分の太ももにぶちまけた
なんだ?
これは?何が起きてるんだ!
私は口の中に
酸味を感じながら叫び声を上げた
「お前は!何者だ!
もう止めろ
頼む、妻を.....妻を何もしないで
くれ!」
私は、もう一人の大切な
家族を思い出した
「息子はどうした?
そうだ!息子だ
おい!聞いているのか!」
男は顔を一回傾げてから
ユックリと顔を横に向けて差した
その先にを見てみると居間の端に
10歳ぐらいの男が
うつ伏せで血の海の中で倒れていた
頭上がヒビが入ったように割れて
脳が少し床に漏れていた
受け入れがたい現実が
目の前で起きている
「ああああああぁぁぁぁ
私の家族を!な.....てことを!」
男は私の叫びを無視をして
また、背中を向けて
赤い鉄パイプを持つ右手を高く
上げて
躊躇なく振り落とし
また、あの鈍い音が聞こえて来た
ドッカドッカ
私の耳の奥に入り込む
慈悲のない暴力の音
耳を塞ぎたいが
両手は使えない
「頼む
頼むから止めてくれ!」
私は、泣き叫びながら
全身でもがいたが
ガタン
ロープは緩まず
椅子と一緒に倒れてしまった
男は、動きを止めて
上げていた鉄パイプを下ろした
私は、妻に叫んだ
「おい!大丈夫か おい!」
愛する妻の返事は
返って来なかった
男が振り返り
私の方へユックリ歩いて来た
私は絶望の淵で抵抗する事を止め
か細い声で男に聞いた
「お前は.....誰なんだ.よ....」
男はズタ袋に掴み
脱ぎ捨てた
見覚えがあるが
誰か思い出せない若い男が
私を見下ろしている
口を横に大きく開き
目を細く歪ませて
男は、赤い鉄パイプを両手で持ち
高く上げて私に言った
「次は、お前だ」
赤い鉄パイプを振り落とした瞬間
私は叫び声を上げて
気がつくと
目の前が公園の風景だった
公園は静まり返り
遊び来てる親子や
犬を散歩さてる老人や子供達が
私の方を
不思議そうに見ていた
知らない間に公園のベンチで
寝ていたみたいだ
デカイ声で叫び声を上げてたので
何事かと注目を浴びてしまった
また
少し経つと何も事無かったかの様に
公園は、いつもの
遊び声が聞こえる風景に戻った
最近
この悪夢を頻繁に見るようになり
寝るのに恐怖を感じ
寝不足気味になり
つい公園のベンチで寝てしまった
休日のお昼過ぎの暖かい
日差しを浴びながら
息子とキャッチボールしていたのに
休憩がてら
ベンチに座ったのがよくなかった
妻には
仕事で疲れてストレス溜めてるから
悪夢を見るのだと言われて
病院に行った方がいいと
勧められてるが
これは
ストレスとかが原因で
見る悪夢じゃない
この悪夢は、現実に起こる事だと
根拠は無いが
強い予感があった
いつか起こるか分からないが
ずっと先なのか?
それとも今日なのかもしれない?
あの男は、何ものなんだ?
何処かで見覚えがあるが
思い出せない
思い出そうとすると
脳が拒絶するかの様に頭痛する
私は、頭を抱えながら
ふっと
息子がいない事に気付いた
息子は、何処に行った?
嫌な予感が全身を駆け上がる
私はベンチから立ち上がり
周りを見ました
遠くの方の生い茂った
草むらにしゃがんでいる
息子が見えた
ホッと一安心して
息子の方へ
歩きながら向かっていると
ピロロロン〜🎵ピロロロン〜🎵
ズボンのポケットに
しまってある携帯が鳴り
ポケットから取り出し
画面を見てみると妻からだった
携帯を出ると
上機嫌な妻の声が
耳に飛び込んで来た
「貴方〜
あとどの位公園にいるの〜」
「もう、帰るよ」
「そうなの、あのね
帰って来てから
話そうと思ったけど
今言っちゃうね」
「なんだよ
何か隠しごとか?
早く言えよ」
「出来たみたい」
「え?何が」
「赤ちゃんよ〜」
「.......赤ちゃん」
「生理来ないから
調べてみたら出来てたみたいなの〜
これであの子も
お兄ちゃんね〜」
「ああ.......そうか
分かった
じゃ、今から帰るな」
私は、携帯切った時
頭痛がした
酷いキリキリする頭を
締め付けるような頭痛
息子の直ぐ側まで近づいたが
息子は、しゃがんだまま
何かに夢中で
私に気付いていないみたいだ
息子の足元には、無数の
頭と胴体がちぎれたバッタの
塊が無数にあった
両手でバッタを掴んで
何処かで聞いた事ある
声を出しながら
「次は、お前だ」
バッタを殺していた
私に気がつき
息子が私に笑顔を見せた
何処で見た事ある表情を
息子は、していた
口を横に大きく開き
目を細く歪ませた表情を
頭痛がする
私は
「さぁ、家に帰ろう
お母さんが待ってから
あとな
お母さんがお前に
嬉しい発表がある
みたいだぞ」と言い
息子に微笑み返した
「え〜何?発表て〜
気になる
教えてよ〜」
「家に帰るまで秘密だ!」
「なんだよケチ親父!」
「ははははぁ
ケチで結構だよ」
息子と私は横に並んで
たわいもない話を
しながら家路に向かった
いつの間にか
頭痛は消えていた
今は
この時が幸せならばと思う感情が
考えたくもない思考を拒絶し
考える事を止めていた
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