SMILE
それは
一週間前の話です
彼女のアパートで別れ話をしてました
別れる切り出したのは、ぼくの方で
別に好きが出来たと言う
身勝手な話です
別れ話を切り出しても
彼女は、終始笑顔でした。
彼女は、立ち上がり
「そうだ!ごめんね
お茶も出さないで
喉乾いたでしょ、今、入れるねぇ」
そう言って、僕を居間に残し
彼女は、玄関の横にあるキッチンに
行ってしまった
責められる覚悟で来たのに
彼女は僕を責めなかった
それが逆に
居たたまれなくなり
僕は、立ち上がり
彼女の事を見ないように下を向き
無言で彼女を横を駆け足で通り抜けて
玄関から飛び出した
そこから
自宅まで
息が切れながらも走り続けて
自宅に着いた僕は、現実から逃げる様に
ベットに潜り込んだ
あれから
一週間後
自分でも
勝手な男だと思うが
彼女の様子が気になって
彼女が住んでるアパートの
玄関の前に立っている
もしかしたら
あの笑顔は、気丈に
振る舞っていただけかもしれない
酷く落ち込んでるかも
何も言わずに出て行った事に
今さらながらも自責の念に苛まれ
最後ぐらいちゃんと別れの
「さようなら」を言わないと
けじめをつける為に
でも
何度もチャイムを鳴らしても
彼女は、扉を開けてくれなかった
そのうち
お隣さんが扉を開けて
訝しげに此方を見ていた
ノーメイクの40代ぐらいの中年女性が
「お隣さんに何かようですか?」
明らかに不審がってる
「あの...ちょっと...恋人というか」
「あら、そうなの
え?知らないんですか
...死にました」
「え?そんな...」
もしかして失恋の果てに自殺...
「可哀想に、交通事故らしいのよ」
少し安堵した自分がいた
彼女の死より
自分のせいじゃないと
呆れるぐらい僕は、最低だ
「それも
丁度一週間前で」
僕が別れを切り出して
別れも最後の言わず
アパートから出てっていた日だ
「いきなり
道路に飛び出したみたいなのぁ」
やっぱり...自殺
彼女は、僕が殺したんだ
力が抜けて
膝から崩れ落ちそうになるのを
必死に堪えた
悲しいのか
何になのか
思考が働かない
ただ彼女が死んだ事実が
徐々に湧いてくるのを
感じていた
あの最後に見せた優しい彼女の笑顔が
蘇って来た
「場所は、あっちの方よ
500メートルぐらいの交差点」
お隣さんが指を指したのは
丁度自分の自宅の方向だった
「それがちょっと
普通の交通事故とちょっとおかしいのよ」
「何がですが?」
「車で引かれたお隣さんね
裸足でね」
「裸足?」
「手にねぇ
包丁を持ってたの」
「...包丁」
「なんか
目撃者の証言ではねぇ
鬼みたいなぁ
形相で走ってたとか言うのよ」
僕の中で
最後に見せた優しい彼女の笑顔が
音を立てて崩れ出した
輪結び
ある仲のいい三人家族がいました
そこのお父さんは、仕事忙しく
小さい時から小学生3年になるまで
娘と余り出掛けた事がありませんでした
家族旅行の計画しても
いつも、急な仕事が入り
計画も頓挫
当然
思い出の家族旅行もありません
お父さんは、そんな娘を
不憫に思い
無理に仕事開けて
家族旅行を計画しました
娘は、大喜びしました
「本当に、本当に
家族旅行に行けるの?」
「ああ行けるよ
ごめんな、今まで
ろくに何処にも連れて行かなくって」
「やったーーー!
嬉しい〜
でも
また、中止になるよの嫌だから
お父さん右腕を出して」
娘に言われるがまま
お父さんは、右腕を娘の前に出すと
綺麗な青い色の細い布を
手首に巻きつけました
「なんだよ、これは?」
「これは"輪結び"と言ってね
今、学校で、流行ってるの」
「はははぁ
そうか、お父さんの子供の時も
ミサンガとか言うのが流行ってたぞ
切れると願い叶うって」
「う〜んそれとは、ちょっと違うなぁ
この"輪結び"をすると
絶対に約束をした人は、その約束を
守ってくれるの
指切りに近いかなぁ」
「そうなのか
そんなに効果があるのか?」
「うん
絶対の効果があるの
お父さん絶対に約束を守ってね」
「分かってる
この"輪結び"かけて
約束守るよ」
そう言ってお父さんは、微笑みで
娘と約束しましたが
旅行の前日
抜けられない仕事が入り
家に帰る事が出来ず
残業することになりました
明日の旅行には
間に合いません
仕方なく
家に電話して
娘に謝りました
「ごめん
本当、ごめん
ママと二人で行ってくれないか
この埋め合わせは、絶対するから」
しばらくの間
受話器の向こうは
無言でした
お父さんは、完全に娘の機嫌が悪いと
頭を抱えていましたが
しばらくすると
冷淡な諦めに近い落ち着いた口調で
娘が喋り始めました
「...お父さん"輪結び"
あれね
今もしてるでしょ
どうして約束を守る効果があるか
教えてあげる
指切りに近いって言ったでしょう
"輪結び"には
別の呼び方があるの
"手首切り"
約束を守らないとね
ギュウって"手首切り"がしまって
いっぱい、いっぱい締めて
どんどん小さくなって
最後
手首が取れちゃうの
だから
"手首切り"」
「おいおい
脅すなよ
悪かったから
そんな、不気味な事を....」
お父さんは
娘の冗談かと思っていましたが
右手に違和感と痛みを感じ
受話器の持つ右手を見ると
手が真っ赤に充血して
"輪結び"を結んでる手首が
ギシギシと締め付ける音がしてきました
受話器が机に落ち
お父さんは床に倒れ込み
痛さ余り踠きながら
受話器から娘の声が聞こえて来ました
「約束を守らないからだよ
お、と、う、さ、ん」
ギッ ギッギッ ギッ ギッ
ドサ
give and take
俺は、今、何故ここにいるか
理解出来ない
理解するのを拒んでるかもしれない
病院の待合室で
頭を抱えてる
なんなんだ
あの女は
最初
付き合い始め時は
とても純朴で素直な子だと
思っていたのに
俺の好みの髪型から始まり
仕草や言葉使い
ファッション
まぁ、ここまでは理解出来る
そのうち
顔を身体の整形して来た
こいつは、狂ってると
感じはじめ
別れようとしたが
女は、許さなかった
毎晩の電話とか
俺に付き纏う
ストーカーの様に
コソコソなら分かるが
当たり前の様に目の前に現れる
そして
本気じゃなかった
まさか、そこまですると思わなかった
つい
俺の口から出てしまった
「俺の事を愛してるなら
死んでみろよ」
女は、その事を言われるのが
分かっていたのか
右手で鞄から
カッターナイフを取り出し
躊躇無く
カッターナイフの刃の先端を
左手首静脈に突き刺した
カッターナイフの刃で
手首を引くんじゃ無く
突き刺した
確実に死を意識した行為
右手のカッターナイフを
グリグリと回し
左手首から血が溢れ出し
最後
カッターナイフを立てまま引いた
噴水の如く溢れ出す血
女は、崩れ倒れながらも
笑っていた
俺は、直ぐに
救急車を呼び
今、女は緊急手術をしてる
何でこんな事に
あの女のそばにいたら
俺の身が危ない
これからどうする?
逃げよう
今直ぐにでも引っ越し
あの女の来れない場所へ
近くを歩いてる
看護師に女の容体を聞いたら
手術は、もう直ぐ終わりそうで
命に別状はないが
1週間ばかり入院するみたいだ
看護師に
彼女の生活用品とか
持って来ます。と嘘を言い
病院を飛び出した
1週間もあれば
引っ越しは、間に合うと思った
俺は、甘かった
自宅に帰らず
そのまま逃げれば良かった
自宅の居間で
青い入院服を着た女が
俺の目前に立っている
終わった
これでお終いだ
そう思うと何故か諦めと言うのか
冷静になれた
俺は、思った
何でこんなに俺に執着をするのか?
女の答えた
「貴方は、私の理想の人
何もかも、私の理想と一致したの
だから
私も合わせて
貴方の理想の女になろうとした
それだけ
この世は
give and takeよ
そうでしょ?
今度は、貴方の番」
女の右手には
カッターナイフが握ってあった
それを俺に差し出し
こう言った
「死んで」