(いつまでも)
私には友達がいた
亜美ちゃんという名前の
6歳になる女の子
まるで姉妹みたい仲良しで
いつも一緒にいてくれた
よく二人でおままごとしたり
私の髪をヘアーブラシで
丁寧に梳かしながら
「私達は、いつも一緒だよ」と
笑顔で言ってくれた
まるで本物
妹みたいに可愛がってくれた
でも....亜美ちゃんは死んだ
それは事故だった
誰も悪くない
不運な事故
亜美ちゃんと私は
二階の子供部屋で遊んでいると
一階にいる
お母さんが、亜美ちゃんを呼び
いつもどうり
亜美ちゃんは駆け足で
階段から降りた時
ちょっと
階段の縁で
亜美ちゃんの先に出た右足が
左足に縺れただけ
階段の下る
いきよいで
亜美ちゃんは上半身が
のめり出し
「あ、」と言う声が
漏れてスローモーションのように
亜美ちゃんは空中に浮かんだ
亜美ちゃんの顔は
何が起きてるか理解出来ない様に
ただ口と目が大きく広げていた
その
一瞬のスローモーションの後
階段の中央の面に
亜美ちゃんの柔らかい
頭上から着地して
「グッギ」と言う
鈍い音を直角に曲がった首から
漏れた
そのまま糸の切れた
操り人形みたいに
手足を弾かれながら
階段の下まで転げ落た
仰向けに倒れてる亜美ちゃんの
首は捻れ
顔の鼻、耳、口、目、
穴という穴から
鮮明な真っ赤な血液を垂れ流して
私の目の前で
身体はピクピクと痙攣させてから
動かなくなった
母親は
「私が悪いの
全部....全部....私のせい」と
自分を責め立て
半狂乱になり
ノイローゼで精神病院に
入院と退院を繰り返し
この惨劇から
逃げるかの様に亜美ちゃんの
父親は、この家を競売にかけて
去っていった
それから
1年後
別の家族が引っ越して来た
三人家族で
亜美ちゃんと同じ
女の子がいる家族
私は、直ぐに女の子と
お友達になったが
その子の母親は
私を意味無く嫌った
顔歪ませて
薄気味悪いバケモノを見る様な目で
私を見て
自分の娘から
私を避けようとした
でも
私直ぐに目の前に現れた
母親は、私を見る度に
醜い声で私に罵声を浴びせた
「何で、いるのよ
捨ててきたのに!
呪いの人形だわ!」
私は、呪いの人形なのか?
別にこの家族に
怨みも無いし呪いもしない
でも
どんなに遠くに捨てられようと
戻ってくる
だって
泣き叫ぶ母親の真後ろに
立っている
首が歪に曲がって
右肩に頭を乗せて
表情のない顔で母親を見ている
亜美ちゃんがいるから
いつも
母親の真後ろにいて
何をするわけでも
無くただ佇むだけ
母親を
大きく開いた目で
凝視する亜美ちゃん
何で自分の母親じゃない人の
側にいるか分からないし
今の亜美ちゃんは何を
考えてるか分からない
でも
あの時に
私の事を大切に
してくれて
髪を賭してながら
「いつも、一緒だよ」と
言ってくれた事を忘れない
亜美ちゃんは
私の大切な友達
だから戻ってくる
亜美ちゃんがこの家に
いる限り
いつまでも....いつまでも
《残り火》
いつもの田舎町の静寂な川岸が
今日は違う風景に変わっていた
人混みの蒸せ返るような
熱気と屋台から独特のお祭り
匂いに苛立ちながら
忙しなく左右に首を動かして
周りを見渡していた
何処に行ったんだ
いつも彼女は
俺を置いていなくなる
俺は、地元の夏祭りに
行きたく無かった
地元の町内会が金を出し合い
些細な打ち上げ花火がある
酒屋である自分も
断る理由が無く毎年徴収される
都会の花火みたいに
何百発の花火は打ち上げ無いが
隣町からも人々が花火を
見に来てる
活気の無い町は
この時だけは、憂さを晴らす様に
賑わいを見せて
町内中が心躍る
彼女が、どうしても
一緒に行きたいと言うから来たのに
目を離した隙に
俺の横から消えていた
まるで迷子の子供だな
"あいつ"に似てる
普段の日常とは違う姿
着飾った葵アサガオ柄の浴衣姿で
俺を迎えに来た時は
ドキッとした
元彼女の投影を浮かべてしまった
夜空に咲き乱れる花火をが
いつもは心の奥底に
封じてる過去の思い出を
花火と共に鮮明に沸き上がる
6年前の同じ日
最後の打ち上げ花火が
夜空に開いた時
元彼女は別れを切り出した
「都会の大学に進学する事に
決めたの」
打ち上げ花火を見上げながら
意思の強い横顔が
花火の光りで照らせれて
花火が散る共に暗闇に消えた
俺は、高校を卒業したら
親の跡を継ぎ酒屋になって
元彼女と
この田舎町に骨を埋めると
思っていたが
元彼女の意思は違っていた
この田舎町で人生を
終わりたく無い
可能性を試しみたいと
俺のもとから
この田舎町から去って行った
人混みの中から遠くの方に
後ろ姿の葵アサガオの浴衣が見えた
あんな所にいたのか
人の群れを掻き分けて
彼女の手を掴んで
「おい!やっと見つけ....」
振り返った顔は
彼女じゃなかった
元カノだった
高校時代は
垢抜け無かった化粧気の無い
昔の顔が都会の顔に
化粧が似合う
大人の女性に変わっていた
ピンク色の唇が
真っ赤な光沢感の口紅をつけている
よく見ると
浴衣は、今の彼女のデザインが違う
昔一緒に来ていた時の
葵アサガオの浴衣
突然の出会いで
頭の中から何か言葉を出そうと
したが気の利いたセリフが
出て来ず
「なんで....いるんの?」が
精一杯のセリフだった
元カノは
昔みたいに笑いながら
「両親が
たまには、帰って来いとか
煩くってねぇ
久しぶりに帰って来たの
変わら無いねぇ
ここも、貴方も」
そのセリフは
まるで、俺に出会うのを
分かっていたかの様に
滑らかに口から出て来た様に
見えた
「そうか
向こうで上手くやってるか?」
「大丈夫だよ
楽しくやってるよ」
元カノは
笑顔作りながらも
視線を下に逸らした
嘘をついてるいる
嘘をつくと
視線を逸らすのは
あの頃ままだ
懐かしくて嬉しかった
「おまえ、相変わらず嘘つくの
下手だな」
元カノが
真剣な眼差しで俺の目を
視つめて来て
「そんな事ないよ....
あのさぁ私達.....」と言いかけ時
「やっと見つけた
もう、勝手に何処か行かないでよ」
後ろから声が聞こ来た
振り返ると
彼女が顔を膨らまして
怒っていた
俺の顔を見て
彼女の表情が曇り始めて
俺の前にいる
元カノの存在に気がついた
「誰?この人」
慌てふためく気持ちを
抑えながら
「高校時代の同級生だよ
久しぶりにこっちに
帰って来たんだって」
元カノは彼女に軽く会釈して
「初めまして
高校の時の友達だった者です
なんだ
可愛い彼女がいるんじゃない
この幸せ者」
元カノは
俺の肩を軽く叩きながら
目の奥を潤ませながら
笑っている
「邪魔者は去るねぇ
バイバイ」
背を向けて
また、俺の前から去って行く
「え....おい待てよ」と
追いかけようとした時
手首を強く握る感触を感じた
振り向くと
彼女が強く俺の手首を掴みながら
俯いてる
「行かないで」
微かな声で彼女が囁いた
聞き取れたが
「なんか言った?」と
聞き返した
彼女は、首を横に振り
「ううん
何も言ってないよ
可愛い同級生だったねぇ
あ、花火」
その時
花火が打ち上げられた
高い音鳴らし
光りの線を夜空に引き
弾け飛びながら
丸い光りの花を咲かせてから
少し遅れて
体に響く音を鳴らした
俺と彼女と夜空を見上げていた
花火を見ながら彼女が不意に
「なんか
あの同級生て私に似ているねぇ」
俺の事を見透かされている
自分の気持ちを押さえ込み様に
彼女の手を強く握りしめて
「似てないよ....
おまえは
俺のそばにいるだろう」
「うん
行かない」
彼女が
強く手を握り返した
最後の打ち上げ花火の残り火が
パチパチと音を鳴らして
消えていった