2014年8月19日火曜日

林檎

林檎








男が、瞼を開けた


病院のベットの上で、点滴を

受けながら男は、寝ていた


入院してから半年が

過ぎた


医者には、絶対に良くなると

言っわれていたが


男は、分かっていた

もう、自分の病気が、治らず

先が短い事も


男が顔を横に向けると

彼女が、眉間に皺を寄せて、真剣に

林檎の皮を向いている


彼女は、昔から手先が不器用で

手を切るんじゃ

ないかと男はハラハラして

見ていた


彼女が男の視線に気づいた


彼女

「あ、起きてたんだ

今、林檎の皮向いてるから

待っててね」


「おい、気をつけろよ

お前は、不器用なんだから」


彼女

「大丈夫よ

林檎の皮向きは、何年も

やっているのよ


痛い!」


彼女の親指から、血が流れてきて

彼女は慌てて親指を口に加えた


「言わんこちゃない

大丈夫か?」


彼女は鞄から、バンドエイド

取り出して、親指に巻つけた


「何年やっても、駄目ね、

てへ♥️」


彼女の笑顔が眩しかった

男は、ドジだけど、こんな

彼女が好きだった


好きだからこそ

男は、心の中で、罪悪感に

苛まれていた


もう少しで、自分は死んでしまう

それは、避けられない事実

死んでしまったら

彼女は悲しい思いをするだろう


自分には、どうする事も出来ない


だったら

他の新しい彼氏を作った方が

彼女にとっては、幸せだけど

自分から、別れを切り出せない


最後の一瞬まで彼女といたいと

思う、自分のワガママに

男は、自分自身に嫌気を指していた


彼女が林檎をお皿に並べながら

男に変な事を聞いて来た


「ねぇ


ちょと聞いていい


もし、人生をやり直せると

したら


また、私と付き合ってくれる?」


男は、驚いた

自分の心を見透かされている

様な、質問をされて

どう答えようか、考えた


「そうだな〜

お前と、付き合わず

もっと、可愛い子を

彼女にするかな〜」


男は、半分本当で半分嘘の

答えを言った

彼女とは、出会いを避け

悲しい思いをさせない為に

誰とも本気で付き合わないと

男は、思った


彼女

「何それ!酷くない!」


彼女の顔が、フグみたに膨れた


「だったら、お前は、どうなんだよ

人生をやり直せるなら

どうする?」


彼女は病室から見える

窓の外の青い空を見ながら

答えた


彼女

「私か〜


実は、ねぇ


私、五回も人生を繰り返してるの


ある日ねぇ

私の目の前に死神が、現れて

「おめでとうございます。

貴方様は、五百年に一度の

人生を五回もやり直せる権利を

獲得しました」


とか、言われちゃってねぇ


五回も人生繰り返して

今が、最後の五回目なの


私、馬鹿だから

五回とも全部

貴方を恋人と選んでしまったわ


一回ぐらい

他の人と付き合えば、良かったのにねぇ



貴方と一緒に時間を過ごしたい

からかな?


不器用だけど林檎を

貴方に食べさせたかた

のかな?


わかんないや


林檎の皮向き

全然、上手くならなかったな


でもねぇ

これだけは、言えるの


私、今

凄い、凄い、幸せよ


なんてね


嘘よ、嘘


作り話よ」


男は、起き上がり

彼女を抱きしめた


嘘でもいい

作り話でもいい


彼女が、自分の事を

思ってくれていて、嬉しかった


「ありがとう

君が、彼女で本当良かった


でも、ごめんな


俺はお前を、置いて

死んでしまう


それだけが、気掛かりだ


死んだ後

俺の事は、忘れてくれ

新しい彼氏を見つけて


俺の事は構わない

新しい人生を生きて欲しいだ」


彼女は、両手で男を引き離し

林檎を一個、差し出した


彼女

「馬鹿の事言わないの!


さぁ、せっかく切った

んだから

食べて、食べて」


男は、涙目で

不恰好な林檎を食べた


凄く甘かったけど

塩っぱかった


「馬鹿な女だ」


窓方から声が聞こえて来て

男が窓を見たが、誰もいなかった


彼女が、微笑みながら

男に言った


彼女

「死神が、呆れて帰っちゃた」








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