(家族)
1月1日 昼12:00 家の居間
お婆さんが紙を片手に持ち
居間の端を行ったり来たり
していた
微かな聞き取れないぐらい
小さい声で
お経を読むみたいに
ブツブツ唱えながら
紙を見ていた
ピンポ〜ン
家のチャイムが鳴り
慌てて紙を
上着の胸ポケットにしまい
玄関に行くと
30代ぐらいの男女と
6歳ぐらいの小さな
可愛い女の子が立っていた
息子
「母さん、久しぶり
孫連れて帰って来たよ」
お婆さん
「お久ぶり、いらっしゃい
まぁ可愛い女の子
加奈子ちゃん、元気だった」
嫁
「お母さん
加代子ですよ、
ほら、加代子、お婆ちゃんに
挨拶は」
小さい女の子はお母さんの
後ろに隠れてモジモジしていた
お婆さん
「あら、ごめんなさい
加代子ちゃんね
恥ずかしいのかな
取り敢えず
ここは寒いから家の
中にどうぞ」
家の居間に3人を案内すると
テーブルの上に豪華な
お節料理が並べてあった
息子
「うわ!凄いな
これ母さんが作ったの?」
お婆さん
「そうなの
皆が来るから張り切って
作り過ぎちゃた
さぁ座って」
家族3人をテーブルの
周りに座らせ
お婆さん
「今、お箸と取り皿持って来る
わね」と言い
台所に取りに行った
食器棚から箸と取り皿
取り出し片手に持って
もう片手方の手で
胸ポケットから
紙を取り出し
真剣な顔で見ていた
後ろに気配を感じ
振り返ると
嫁が真顔で立っていた
嫁
「お母さん
私も手伝いましょうか?」
お婆さん慌てて紙を
胸ポケットにしまい
お婆さん
「大丈夫、大丈夫
今持って行きますから」
お婆さんと嫁は居間に戻り
皆に取り皿と箸を配った
お婆さん
「さぁ食べてちょうだい
遠慮は要らないかね」
家族3人は美味しいそうに
お節料理を食べ始めた
お婆さんはその様子を
微笑みながら見ていると
息子が気づき
息子
「母さんも食べなよ」
お婆さん
「私はいいわ皆が食べてる
姿を見てるだけで十分
そういえば、最近仕事の方
大丈夫?
営業マンも大変でしょ
営業に行っても相手に
されないでしょう?」
息子
「そうなんだよ
本当不景気のせいで
仕事の量ばかり増えて
給料が落ちる一方でさぁ
まいっちゃうよ」
嫁
「もう、今日は暗い話は無しよ
正月なんだから
お母さんも心配しちゃうじゃない」
お婆さん
「ありがとう、美代子さん
美代子さんも
スーパーのパート大変でしょ」
嫁
「大丈夫ですよ
結構楽しくやってます
今の世の中共働きは当たり前
ですからね」
息子
「すみませんね、甲斐性無しで
今に一発当ててやるから
見ててくれよ」
お婆さん
「全くもう、あんたは
昔から調子のいい事ばかり
言うんだから」
息子
「もう、それは言いっこなしだよ」
お婆さん、嫁
「「あははははぁ」」
家の中に笑いが起こり
そんな何げない会話してる
うちに女の子も家に慣れて来て
お婆さんの
膝の上に座るようになってきた
本当に小さくって可愛い孫
優しく頭を撫でると女の子が
こちらを向いて笑いかけて来た
お婆さんも優しく笑い返した
4時間後
息子が腕時計を見て
息子
「もう、四時かそろそろ
帰らないと」
お婆さん
「あら、もう、そんな時間なの
時間は立つのは、早いわね」
お婆さん引き出しから
封筒を出し
息子に渡した
お婆さん
「少ないけど、これ持ってて
頂戴」
息子は封筒受け取り
中身を確認すると4万円が
入っていた
息子
「母さん、ありがとう
このお金は大事に使うよ
これ手紙、後で読んでね」
手紙を受け取って
三人を玄関の外に駐車している
車まで見送った
走り出す車の後部座席の窓から
女の子が笑顔で手を振っている
お婆さんも手を振り
車が見えなくなるまで
立っていた
空を見上げると
夕日が沈み掛けていた
お婆さんは深いため息ついて
家の居間に戻り
胸のポケットにしまって
あった紙を広げた
(レンタル家族の設定
息子.名前正一
職業.営業マン
性格お調子者
嫁.名前美代子
職業.スーパーのパート
性格しっかり者
孫.名前加代子
幼稚園に通っている
性格恥ずかしいがり屋
料金は一時間一万円です
最後、息子役の人に料金を
渡して下さい)
お婆さんは息子役の人から
貰った手紙を開けると
その中には領収書が入っていた
ふと居間の中を見ると
もう誰もいない
ただあるのは静けさだけ
さっきまで笑い声響いていた居間が
嘘のように音が何もない
倒れるように
座り込み
耳が痛くなるような
静けさにお婆さんは
耳を抑え
それを打ち消すように
大声で泣いた
夕日が沈み居間が
暗くなり始めた
まるで暗闇が飲み込むように
泣いているお婆さんが暗闇に
包まれた


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