2017年2月28日火曜日

SMILE

SMILE




それは

一週間前の話です

彼女のアパートで別れ話をしてました

別れる切り出したのは、ぼくの方で

別に好きが出来たと言う

身勝手な話です


別れ話を切り出しても

彼女は、終始笑顔でした。


彼女は、立ち上がり

「そうだ!ごめんね

お茶も出さないで

喉乾いたでしょ、今、入れるねぇ」

そう言って、僕を居間に残し

彼女は、玄関の横にあるキッチンに

行ってしまった


責められる覚悟で来たのに

彼女は僕を責めなかった


それが逆に

居たたまれなくなり

僕は、立ち上がり

彼女の事を見ないように下を向き

無言で彼女を横を駆け足で通り抜けて

玄関から飛び出した


そこから

自宅まで

息が切れながらも走り続けて

自宅に着いた僕は、現実から逃げる様に

ベットに潜り込んだ


あれから

一週間後


自分でも

勝手な男だと思うが

彼女の様子が気になって

彼女が住んでるアパートの

玄関の前に立っている


もしかしたら

あの笑顔は、気丈に

振る舞っていただけかもしれない

酷く落ち込んでるかも


何も言わずに出て行った事に

今さらながらも自責の念に苛まれ

最後ぐらいちゃんと別れの

「さようなら」を言わないと

けじめをつける為に


でも

何度もチャイムを鳴らしても

彼女は、扉を開けてくれなかった


そのうち

お隣さんが扉を開けて

訝しげに此方を見ていた

ノーメイクの40代ぐらいの中年女性が

「お隣さんに何かようですか?」

明らかに不審がってる


「あの...ちょっと...恋人というか」


「あら、そうなの

え?知らないんですか

...死にました」


「え?そんな...」

もしかして失恋の果てに自殺...


「可哀想に、交通事故らしいのよ」


少し安堵した自分がいた

彼女の死より

自分のせいじゃないと

呆れるぐらい僕は、最低だ


「それも

丁度一週間前で」


僕が別れを切り出して

別れも最後の言わず

アパートから出てっていた日だ


「いきなり

道路に飛び出したみたいなのぁ」


やっぱり...自殺

彼女は、僕が殺したんだ

力が抜けて

膝から崩れ落ちそうになるのを

必死に堪えた


悲しいのか

何になのか

思考が働かない


ただ彼女が死んだ事実が

徐々に湧いてくるのを

感じていた

あの最後に見せた優しい彼女の笑顔が

蘇って来た


「場所は、あっちの方よ

500メートルぐらいの交差点」


お隣さんが指を指したのは

丁度自分の自宅の方向だった


「それがちょっと

普通の交通事故とちょっとおかしいのよ」



「何がですが?」


「車で引かれたお隣さんね

裸足でね」


「裸足?」


「手にねぇ

包丁を持ってたの」


「...包丁」


「なんか

目撃者の証言ではねぇ

鬼みたいなぁ

形相で走ってたとか言うのよ」


僕の中で

最後に見せた優しい彼女の笑顔が

音を立てて崩れ出した




輪結び

輪結び




ある仲のいい三人家族がいました

そこのお父さんは、仕事忙しく

小さい時から小学生3年になるまで

娘と余り出掛けた事がありませんでした


家族旅行の計画しても

いつも、急な仕事が入り

計画も頓挫


当然

思い出の家族旅行もありません


お父さんは、そんな娘を

不憫に思い

無理に仕事開けて

家族旅行を計画しました


娘は、大喜びしました

「本当に、本当に

家族旅行に行けるの?」


「ああ行けるよ

ごめんな、今まで

ろくに何処にも連れて行かなくって」


「やったーーー!

嬉しい〜

でも

また、中止になるよの嫌だから

お父さん右腕を出して」


娘に言われるがまま

お父さんは、右腕を娘の前に出すと

綺麗な青い色の細い布を

手首に巻きつけました


「なんだよ、これは?」


「これは"輪結び"と言ってね

今、学校で、流行ってるの」


「はははぁ

そうか、お父さんの子供の時も

ミサンガとか言うのが流行ってたぞ

切れると願い叶うって」


「う〜んそれとは、ちょっと違うなぁ

この"輪結び"をすると

絶対に約束をした人は、その約束を

守ってくれるの

指切りに近いかなぁ」


「そうなのか

そんなに効果があるのか?」


「うん

絶対の効果があるの

お父さん絶対に約束を守ってね」


「分かってる

この"輪結び"かけて

約束守るよ」

そう言ってお父さんは、微笑みで

娘と約束しましたが


旅行の前日

抜けられない仕事が入り

家に帰る事が出来ず

残業することになりました


明日の旅行には

間に合いません


仕方なく

家に電話して

娘に謝りました


「ごめん

本当、ごめん

ママと二人で行ってくれないか

この埋め合わせは、絶対するから」


しばらくの間

受話器の向こうは

無言でした

お父さんは、完全に娘の機嫌が悪いと

頭を抱えていましたが

しばらくすると

冷淡な諦めに近い落ち着いた口調で

娘が喋り始めました


「...お父さん"輪結び"

あれね

今もしてるでしょ


どうして約束を守る効果があるか

教えてあげる

指切りに近いって言ったでしょう


"輪結び"には

別の呼び方があるの




"手首切り"




約束を守らないとね

ギュウって"手首切り"がしまって

いっぱい、いっぱい締めて

どんどん小さくなって


最後

手首が取れちゃうの


だから

"手首切り"」


「おいおい

脅すなよ

悪かったから

そんな、不気味な事を....」


お父さんは

娘の冗談かと思っていましたが

右手に違和感と痛みを感じ

受話器の持つ右手を見ると


手が真っ赤に充血して

"輪結び"を結んでる手首が

ギシギシと締め付ける音がしてきました


受話器が机に落ち


お父さんは床に倒れ込み

痛さ余り踠きながら

受話器から娘の声が聞こえて来ました


「約束を守らないからだよ

お、と、う、さ、ん」






ギッ     ギッギッ          ギッ      ギッ


ドサ




ぎぶあんどていく

give and take



俺は、今、何故ここにいるか

理解出来ない

理解するのを拒んでるかもしれない

病院の待合室で

頭を抱えてる


なんなんだ

あの女は


最初

付き合い始め時は

とても純朴で素直な子だと

思っていたのに


俺の好みの髪型から始まり

仕草や言葉使い

ファッション

まぁ、ここまでは理解出来る

そのうち

顔を身体の整形して来た


こいつは、狂ってると

感じはじめ


別れようとしたが

女は、許さなかった


毎晩の電話とか

俺に付き纏う

ストーカーの様に

コソコソなら分かるが

当たり前の様に目の前に現れる


そして

本気じゃなかった

まさか、そこまですると思わなかった

つい

俺の口から出てしまった

「俺の事を愛してるなら

死んでみろよ」


女は、その事を言われるのが

分かっていたのか


右手で鞄から

カッターナイフを取り出し


躊躇無く

カッターナイフの刃の先端を

左手首静脈に突き刺した


カッターナイフの刃で

手首を引くんじゃ無く

突き刺した



確実に死を意識した行為

右手のカッターナイフを

グリグリと回し

左手首から血が溢れ出し

最後

カッターナイフを立てまま引いた


噴水の如く溢れ出す血


女は、崩れ倒れながらも

笑っていた


俺は、直ぐに

救急車を呼び

今、女は緊急手術をしてる


何でこんな事に

あの女のそばにいたら

俺の身が危ない

これからどうする?


逃げよう

今直ぐにでも引っ越し

あの女の来れない場所へ


近くを歩いてる

看護師に女の容体を聞いたら

手術は、もう直ぐ終わりそうで

命に別状はないが

1週間ばかり入院するみたいだ


看護師に

彼女の生活用品とか

持って来ます。と嘘を言い

病院を飛び出した


1週間もあれば

引っ越しは、間に合うと思った

俺は、甘かった

自宅に帰らず

そのまま逃げれば良かった


自宅の居間で

青い入院服を着た女が

俺の目前に立っている


終わった

これでお終いだ

そう思うと何故か諦めと言うのか

冷静になれた


俺は、思った

何でこんなに俺に執着をするのか?


女の答えた


「貴方は、私の理想の人

何もかも、私の理想と一致したの

だから

私も合わせて

貴方の理想の女になろうとした

それだけ


この世は

give and takeよ

そうでしょ?

今度は、貴方の番」


女の右手には

カッターナイフが握ってあった

それを俺に差し出し

こう言った


「死んで」





2016年12月22日木曜日

歯車

歯車



これは

運命の歯車に、狂わされた男の話だ。



歯車と言っても、色々ある。

幸福の連鎖と、言うか

いい事が、数珠つなぎで起きる事や

それとは、逆に悪い事が、感染して起きる事


今から話す

この男は

運悪く後者の方のお話だ。




その男は、今

日本海の自殺の名所とも

言われている

断崖絶壁に立っている。


男のつま先には

三十メートルの下降に

吹き飛ばされそうな風と

荒れ狂う波が打ち付けてる。


この波の呑まれたら

死体が粉々になり

海の一部とかすだろう



男は右手に持ってるいる

紙を強く握り締めた

この紙は

ここで自殺するはずだった男の

最後の書き置きであった


憎しみか..

悲しみか...


ただ、男の前に広がる

薄暗い雲のかかった

地平線の日本海を睨んでいた


そこに

一人の老人が声を掛けて来た


「何をしてるんですか?」

男が振り返ると

70代ぐらいの老人が笑みを

浮かべて和かに話を掛けて来た


その老人の笑みは

警戒心を解く為の手段なんだろう


男は、老人に軽く会釈をして返した


「ちょっと

ここに用事がありまして」


「ほう

用事ですか?

ここに用事がある人は

亡くした人の弔いか...

それか....何かも捨て去る人しか

来ないですよ」


「弔いですか...近いものが

あるかもしれませんね

実は、貴方の事を知ってるですよ」


男は、老人の背後にある

雑木林の中にある

よく工事現場である

仮設公衆トイレぐらいの

ベニヤ板で出来た

小さな小屋を指で刺し


「ここは

有名な自殺の名所で

そして貴方も有名な、おじいさん

わざわざあんな所に監視部屋まで

作って

自殺する人を説得?

嗜める

変わったお人好しですよね」


男の、その棘のある言葉に

老人は

顔色変えずに和かな笑みは

崩れなかった

数々の自殺する人の中には

罵倒する者もいただろう

要は、場慣れと言う奴かもしれない


「もしかして

私に会いに来たんですか?

取材とか何かで?」


「近いかもしれません

こんな辺鄙で、分かりずらい場所

ここに来るまでに大変でした


道迷い

民家も見当たらず


やっとの思いで

民家を一軒見つけまして

そして、この場所まで教えてもらい

おっと

話が逸れました


二週間前に

ここに

20代ぐらいの眼鏡を掛けた

青白い痩せ型の男が、来ませんでしたか?」


「来たよ

なんでも

会社のノルマとかイジメとかに

生き地獄で

辞めるにも辞められず

苦労して入った大手企業で

親の期待にもかかっていたそうじゃが


その若者に

無理しないで

会社を辞めたっていいじゃないか

息子が生きてるだけでも親は、充分だと

思ってる

死んだら、親が一番悲しむと

説得したら


泣きながら

頷き、帰って言ったよ

まさか、貴方

あの若者の知り合いなのか?」


「いいえ違います

この手紙の持ち主ですよ

その青年は」


男は、右手に握り締めて持っていた

書き置きを老人に渡した


老人は、書き置きを書いてある

字を目で追いながら

顔から血の気が引き

表情が強張った


「これは?」


「遺書です」


「そ......そうなのか!」


「青年は

その遺書に書いたあるとうり

あれから

会社を辞めてます


そしたらどうでしょう

親から罵倒され

勘当され


挙句の果ては...勤めていた

会社から飛び降り自殺ですよ」


老人は膝から崩れ堕ち

遺書に涙を零した


男は蔑む様に老人を

見下ろし


「そしてねぇ..


「そして?」


「死んだのは、一人じゃないんです

死んだのは2

いや

3人なんです


私と妻が

飛び降り自殺した

会社の近くで働いていて


その日は

寿退社で職場の同僚や上司から花を

両手抱えて視界が悪かった

お腹にも三カ月の赤ちゃんがいて


私が心配して

『花を持とうか?』と言っても

『いいの、大丈夫これから

お母さんになるからこれぐらい平気』と

笑い掛けてくれたんです。


そんな

帰宅途中でした


何かが

私の横に降って来たんですよ

私の横には妻がいたはず


横を振り向いても

妻は、いなかった


その代わり

下を見たら


散らばった無数の花弁と

二つの塊

おびただし血が広がっていました


二人...いや

3人共即死でした


妻の葬儀には

自殺した青年の両親が

来ました

その遺書を持ってね


責任転換ですよ

何度も

『本当は自殺の名所で、死ぬはずだった』

『この手紙の爺さんが止めなければ』って

自分の息子を死に追いやったのにね


酷い話じゃないですか

ハハハハハァ」

男が乾いた高笑いをした


その笑い声は

高波と強風とまるで

共鳴してるかの様に

老人の耳に響いた


老人は、男の足に縋りつき

聞いた


「どうすばいいんじゃ

どうすれば許される?


私が悪かったのか?

ただ、残りの余生は、人の為に

使いたかった

それだけ

ただ、それだけの...

ワシが、死ねば許されるのか?」


老人は、男の足に縋りながら

岸壁の下を見下ろしたが

男は、老人の肩に手をやり

首を横に振った


「死なないから

生きているから

何でも許される

上手く行くとは限りません

生きるのも苦しみ伴う


出来れば

私と同じ苦しみを味わって貰いたい


そうだ

ここに来る前に


道迷い

民家に道を聞いたと言ったでしょう

その民家

貴方のお家でした


貴方そっくりの

優しそうな

お人とでね

貴方の事をベラベラと聞かせてくれました


『うちの主人は、偉いとか』

『人の為にやってる、仏様みたいな

人だとか』


その話を聞いてるうちに

胸の奥底で黒い物が、湧き上がってね

みんな自分勝手な事を言いやがって

憎しみとか言う奴なんでしょうか


本当、無意識のうちにですよ」


「無意識?」


男は、両手を老人の首に

閉める真似をした


「同じ苦しみ」


「うわああああああああ」


老人は、男の両手を振り払い

体当たりして


男が、ふっと

浮き上がり、そのまま

吸い込まれる様に

落ちていった





この話は、ここで

お終いです


何故か?

私が今落ちているからです


そう

この運命の歯車に狂わされた

男は、私です


この先

老人がどうなったか

分かりません


ただ

感謝しています

これで

妻と赤ちゃんの元に行けると思うと

安堵に満ち溢れています


自殺をしたら

地獄ヘ行くと子供の頃に聞いた事があります


出来るなら

殺されたい


そう思い

おじいさんの妻を殺した

振りをしただけです


確かに殺したいと

思いましたが

地獄に行っては

二人に会えません


これで

運命の歯車から解放される



私は

老人が、ただ目を丸くして

此方を見てるのが

段々と老人の顔小さくなり

遠ざかって行くのが


スローモーションの様に見えます


この先、老人は

どうなるのか?


もう

どうでもいい

貴方は、最後の余生を人殺しの犯罪者として

生きて下さい


私は

死を受け入れる為に

静かに目を瞑った