クローン
真っ青な青空の下で
私の息子が庭で走り回ってる
元気に、はしゃぎなが妻と
追いかけっこしてる
私の息子...
いや...あれは、息子なのか?
顔、体、声、動き
息子そのものだけど息子では無い
似ているが、個体が違う
作り物だ
本当の私の息子は、半年前に死んだ
交通事故で妻の不注意だ
スーパーの買い物途中でお菓子を
買って欲しいと息子が駄々を捏ねて
言う事を聞かない息子を置いて
レジに行ってしまった
置いてきぼりをして反省するだろうと
少しの間なら大丈夫だろうと
たかをくくって妻の誤った判断が
裏目に出てしまった
妻が戻った時には
駄々を捏ねいた息子の姿はなっかた
スーパーの外で何か
鈍い物が打つかる音と
複数の女性の悲鳴と騒めく声
息子は...妻を探しに
一人で、外に出てしまったらしい
そして、道路を走行中の車に...
当たり所が悪く
道路のアスファルトに頭部を強打して
即死だと聞いている
私は、仕事場から連絡を受けて病院に
駆けつけた時には
魂の抜けた空っぽの
操り人形の糸が切れたみたいに
安置所のベッドに横たわってる息子の側で動かない妻を責める気には
なれないかった
責めた所で息子は帰って来ないのだから
意気消沈の妻の肩に手を置こうした時
妻が顔を上げて
微笑を浮かべて言った
「大丈夫...大丈夫...帰って来るから..」
「お前まさか!」
その時私の頭に過ぎった物は
(クローン法案)
死んだ人間の遺伝子を
使用してクローンを作ると言う物
現代の科学が進歩がして
等々、人のクローンを作れるまで発展した
人間のゲノム解析は、当の昔に解析されていたが
実際に作りあげる技術は、無かった
神の冒涜、自然の摂理に反する
正にパンドラの箱だ
それを最初に開けてしまったのは
中国だった
細胞を培養して増殖して成長を促し
短時間で単細胞から細胞に体の組織を作り
3Dプリンターで繋ぎ合わせる
数ヶ月で子供の体ぐらいまで作る事が
それに中国の科学者は成功した
中国は世界各地のメディアに
宣伝した
当たり前の事だが
世界中から批難を浴びた
倫理的、道徳的、宗教的に問題だと
だか
中国は科学の進歩を
妨げる方が人類にとって悪だと
反発し
クローンビジネスを展開し
世界に売り込んだ
世界中で論争を巻き起こした
それは、最初は反対派が多かった
人間は、誰かがたかが外れると
それは、連鎖する
こんな旨味のある
禁断の果樹を黙って指を咥えて我慢出来る
はずもなく
アメリカのハリウッドスターの
子供が病死
その遺体を中国に持ち込み
クローンを作ってしまった
それからだ
クローン批判がクローン賛成に風向きが
変わったのは
アメリカのハリウッドスターを使って
クローン会社の謳い文句は
(悲しみに苛まれる事が無くなりました
愛する人を
もう一度この手で抱きしめられる)
アメリカの個人主義が選択のクローンの
自由な選択をあってもいいじゃ無いか?と
囁かれ
アメリカでも中国と提携して
クローンビジネスが展開
アメリカが賛同したらなら
それは日本でも賛同したのと同然
日本にクローンビジネスが参入したのは
時間がかからなかった
政府も可決されたのがクローン法案だ
自分達の生活に異物が入る事は
最初は抵抗があった
誰もが、クローンが何処かにいると
疑心暗鬼になり
冗談半分で日常会話で言う様になったが
クローン自体、普段の生活に馴染ませる為
自分がクローンだと知らず
一般の生活に潜り込ませる
知ってるのは、親族だけ
周りもわからず溶け込んでしまい
喉元過ぎれば熱さを忘れる
クローン自体の話題も
いつの間にか誰も言わなくった
でも
私は喉元にまだ痼りが残ったままだった
飲み込むには抵抗があった
あくまでも死んだ人間は、蘇らない
クローンはクローンでしかない
個体が違うのだから別の何かだ
私は、妻に反対をしたが
抵抗は無駄だった
妻は「絶対に受け入れらる」
「この子が、いなきゃ死んでやる!」と
半分脅しに近い感じで
私は、承諾するしか道がなっかた
今、元気に走り回る息子のクローンは
自分がクローンだと知らない
妻は、一生言うつもりも無いと言うが...
私は、死んだ息子の死を忘れたくないし
無かった事にしたく無い
それでは死んだ息子がうかばれない
走り回っていた
息子が私の足元に抱きついて来た
「パパ捕まえた」
その感触は、息子そのものだけど...
私は、両手で包む様に抱く事が出来なかった
受け入れてしまったら
何かを失ってしまう様で
「ほら、ママの所へ、行っておいで」
息子がママの元へ走っていた
妻は息子を抱きかかえて
私に悲しみなのか憎しみなのか
蔑んだ目で私を見ていた
家に帰り息子を寝かしつけた妻が
私を見透かす様に責めた
「なんで受け入れられないの?
貴方の息子よ
子供は敏感だから気づくの
いつまでも過去に囚われていないで
受け入れないさいよ!」
「分かっている
分かっているけど
自信が無いんだ
受け入れらる自信が
お前は、よく受け入れらるなぁ
息子は息子でもクローンだぞ
死んだ息子はどうなる?
可哀想じゃ無いか」
私は、そういいながらも
妻の目が見れずに
箪笥の上に置いてある息子の位牌を
指を刺そうとしたが
箪笥の上に位牌が無かった
「おい!息子の位牌は?」
「寝室のクローゼットにしまったわ
あの子が、クローンだと気づいたら
どうするの?
あれは、いつまでも飾っておけない」
「ふざけるなぁ!」
私は怒りに身を任せ怒鳴ってしまった
それでも妻は、臆する事なく
私を澄んだ目で見つめていた
私は階段を登り二階の寝室に入いると
クローンの息子がベッドで
小さき寝息を立てて寝ている
抱きしめたい
抱きしめたいが
確かに息子だが...喉に詰まる異物が
飲み込めない
私は奥歯を噛み締めて
クローゼットを開けた
クローゼットの中には位牌があった
息子の位牌
でも
位牌が一つでは無かった
位牌が二つあった
状況が飲み込めない
位牌は、一つのはず
息子の位牌と、あと一つは、誰の位牌だ?
「大丈夫
受け入れられる
私は、もう既に一回、受け入れる事が
出来て生活して来たのよ」
いつの間にか妻が
寝室の扉に側で私を見ていた
私の事を包む様な笑顔で優しく頬んで
そうだったのか
私は、自分の両手を見た
俺は誰だ?
妻に
「誰を受け入れ....」と途中まで言いかけたが
言うのを辞めた
もう
考えるの辞めよう
スッと抜け落ちたみたいに
頭の中で思考が停止した
無邪気に眠る息子を見ながら
唾を飲み込んだ