2017年8月24日木曜日

クローン

クローン




真っ青な青空の下で

私の息子が庭で走り回ってる

元気に、はしゃぎなが妻と

追いかけっこしてる


私の息子...

いや...あれは、息子なのか?

顔、体、声、動き

息子そのものだけど息子では無い


似ているが、個体が違う

作り物だ

本当の私の息子は、半年前に死んだ

交通事故で妻の不注意だ

スーパーの買い物途中でお菓子を

買って欲しいと息子が駄々を捏ねて


言う事を聞かない息子を置いて

レジに行ってしまった


置いてきぼりをして反省するだろうと

少しの間なら大丈夫だろうと

たかをくくって妻の誤った判断が

裏目に出てしまった


妻が戻った時には

駄々を捏ねいた息子の姿はなっかた


スーパーの外で何か

鈍い物が打つかる音と

複数の女性の悲鳴と騒めく声


息子は...妻を探しに

一人で、外に出てしまったらしい


そして、道路を走行中の車に...

当たり所が悪く

道路のアスファルトに頭部を強打して

即死だと聞いている


私は、仕事場から連絡を受けて病院に

駆けつけた時には

魂の抜けた空っぽの

操り人形の糸が切れたみたいに

安置所のベッドに横たわってる息子の側で動かない妻を責める気には

なれないかった

責めた所で息子は帰って来ないのだから


意気消沈の妻の肩に手を置こうした時

妻が顔を上げて

微笑を浮かべて言った


「大丈夫...大丈夫...帰って来るから..


「お前まさか!」


その時私の頭に過ぎった物は

(クローン法案)


死んだ人間の遺伝子を

使用してクローンを作ると言う物


現代の科学が進歩がして

等々、人のクローンを作れるまで発展した

人間のゲノム解析は、当の昔に解析されていたが

実際に作りあげる技術は、無かった


神の冒涜、自然の摂理に反する

正にパンドラの箱だ

それを最初に開けてしまったのは

中国だった


細胞を培養して増殖して成長を促し

短時間で単細胞から細胞に体の組織を作り

3Dプリンターで繋ぎ合わせる

数ヶ月で子供の体ぐらいまで作る事が

それに中国の科学者は成功した


中国は世界各地のメディアに

宣伝した

当たり前の事だが

世界中から批難を浴びた

倫理的、道徳的、宗教的に問題だと


だか

中国は科学の進歩を

妨げる方が人類にとって悪だと

反発し

クローンビジネスを展開し

世界に売り込んだ


世界中で論争を巻き起こした

それは、最初は反対派が多かった


人間は、誰かがたかが外れると

それは、連鎖する

こんな旨味のある

禁断の果樹を黙って指を咥えて我慢出来る

はずもなく


アメリカのハリウッドスターの

子供が病死

その遺体を中国に持ち込み

クローンを作ってしまった


それからだ

クローン批判がクローン賛成に風向きが

変わったのは

アメリカのハリウッドスターを使って

クローン会社の謳い文句は


(悲しみに苛まれる事が無くなりました

愛する人を

もう一度この手で抱きしめられる)


アメリカの個人主義が選択のクローンの

自由な選択をあってもいいじゃ無いか?と

囁かれ


アメリカでも中国と提携して

クローンビジネスが展開


アメリカが賛同したらなら

それは日本でも賛同したのと同然

日本にクローンビジネスが参入したのは

時間がかからなかった

政府も可決されたのがクローン法案だ


自分達の生活に異物が入る事は

最初は抵抗があった

誰もが、クローンが何処かにいると

疑心暗鬼になり

冗談半分で日常会話で言う様になったが


クローン自体、普段の生活に馴染ませる為

自分がクローンだと知らず

一般の生活に潜り込ませる

知ってるのは、親族だけ


周りもわからず溶け込んでしまい

喉元過ぎれば熱さを忘れる

クローン自体の話題も

いつの間にか誰も言わなくった



でも

私は喉元にまだ痼りが残ったままだった

飲み込むには抵抗があった


あくまでも死んだ人間は、蘇らない

クローンはクローンでしかない

個体が違うのだから別の何かだ


私は、妻に反対をしたが

抵抗は無駄だった


妻は「絶対に受け入れらる」

「この子が、いなきゃ死んでやる!」と

半分脅しに近い感じで

私は、承諾するしか道がなっかた



今、元気に走り回る息子のクローンは

自分がクローンだと知らない

妻は、一生言うつもりも無いと言うが...


私は、死んだ息子の死を忘れたくないし

無かった事にしたく無い

それでは死んだ息子がうかばれない


走り回っていた

息子が私の足元に抱きついて来た


「パパ捕まえた」

その感触は、息子そのものだけど...

私は、両手で包む様に抱く事が出来なかった

受け入れてしまったら

何かを失ってしまう様で


「ほら、ママの所へ、行っておいで」

息子がママの元へ走っていた


妻は息子を抱きかかえて

私に悲しみなのか憎しみなのか

蔑んだ目で私を見ていた


家に帰り息子を寝かしつけた妻が

私を見透かす様に責めた

「なんで受け入れられないの?

貴方の息子よ

子供は敏感だから気づくの

いつまでも過去に囚われていないで

受け入れないさいよ!」


「分かっている

分かっているけど

自信が無いんだ

受け入れらる自信が


お前は、よく受け入れらるなぁ

息子は息子でもクローンだぞ

死んだ息子はどうなる?

可哀想じゃ無いか」


私は、そういいながらも

妻の目が見れずに

箪笥の上に置いてある息子の位牌を

指を刺そうとしたが


箪笥の上に位牌が無かった


「おい!息子の位牌は?」


「寝室のクローゼットにしまったわ

あの子が、クローンだと気づいたら

どうするの?

あれは、いつまでも飾っておけない」


「ふざけるなぁ!」

私は怒りに身を任せ怒鳴ってしまった

それでも妻は、臆する事なく

私を澄んだ目で見つめていた


私は階段を登り二階の寝室に入いると

クローンの息子がベッドで

小さき寝息を立てて寝ている


抱きしめたい

抱きしめたいが

確かに息子だが...喉に詰まる異物が

飲み込めない

私は奥歯を噛み締めて

クローゼットを開けた


クローゼットの中には位牌があった


息子の位牌


でも

位牌が一つでは無かった

位牌が二つあった


状況が飲み込めない

位牌は、一つのはず

息子の位牌と、あと一つは、誰の位牌だ?



「大丈夫

受け入れられる

私は、もう既に一回、受け入れる事が

出来て生活して来たのよ」


いつの間にか妻が

寝室の扉に側で私を見ていた

私の事を包む様な笑顔で優しく頬んで


そうだったのか

私は、自分の両手を見た

俺は誰だ?


妻に

「誰を受け入れ....」と途中まで言いかけたが

言うのを辞めた


もう

考えるの辞めよう


スッと抜け落ちたみたいに

頭の中で思考が停止した


無邪気に眠る息子を見ながら

唾を飲み込んだ



















2017年2月28日火曜日

SMILE

SMILE




それは

一週間前の話です

彼女のアパートで別れ話をしてました

別れる切り出したのは、ぼくの方で

別に好きが出来たと言う

身勝手な話です


別れ話を切り出しても

彼女は、終始笑顔でした。


彼女は、立ち上がり

「そうだ!ごめんね

お茶も出さないで

喉乾いたでしょ、今、入れるねぇ」

そう言って、僕を居間に残し

彼女は、玄関の横にあるキッチンに

行ってしまった


責められる覚悟で来たのに

彼女は僕を責めなかった


それが逆に

居たたまれなくなり

僕は、立ち上がり

彼女の事を見ないように下を向き

無言で彼女を横を駆け足で通り抜けて

玄関から飛び出した


そこから

自宅まで

息が切れながらも走り続けて

自宅に着いた僕は、現実から逃げる様に

ベットに潜り込んだ


あれから

一週間後


自分でも

勝手な男だと思うが

彼女の様子が気になって

彼女が住んでるアパートの

玄関の前に立っている


もしかしたら

あの笑顔は、気丈に

振る舞っていただけかもしれない

酷く落ち込んでるかも


何も言わずに出て行った事に

今さらながらも自責の念に苛まれ

最後ぐらいちゃんと別れの

「さようなら」を言わないと

けじめをつける為に


でも

何度もチャイムを鳴らしても

彼女は、扉を開けてくれなかった


そのうち

お隣さんが扉を開けて

訝しげに此方を見ていた

ノーメイクの40代ぐらいの中年女性が

「お隣さんに何かようですか?」

明らかに不審がってる


「あの...ちょっと...恋人というか」


「あら、そうなの

え?知らないんですか

...死にました」


「え?そんな...」

もしかして失恋の果てに自殺...


「可哀想に、交通事故らしいのよ」


少し安堵した自分がいた

彼女の死より

自分のせいじゃないと

呆れるぐらい僕は、最低だ


「それも

丁度一週間前で」


僕が別れを切り出して

別れも最後の言わず

アパートから出てっていた日だ


「いきなり

道路に飛び出したみたいなのぁ」


やっぱり...自殺

彼女は、僕が殺したんだ

力が抜けて

膝から崩れ落ちそうになるのを

必死に堪えた


悲しいのか

何になのか

思考が働かない


ただ彼女が死んだ事実が

徐々に湧いてくるのを

感じていた

あの最後に見せた優しい彼女の笑顔が

蘇って来た


「場所は、あっちの方よ

500メートルぐらいの交差点」


お隣さんが指を指したのは

丁度自分の自宅の方向だった


「それがちょっと

普通の交通事故とちょっとおかしいのよ」



「何がですが?」


「車で引かれたお隣さんね

裸足でね」


「裸足?」


「手にねぇ

包丁を持ってたの」


「...包丁」


「なんか

目撃者の証言ではねぇ

鬼みたいなぁ

形相で走ってたとか言うのよ」


僕の中で

最後に見せた優しい彼女の笑顔が

音を立てて崩れ出した




輪結び

輪結び




ある仲のいい三人家族がいました

そこのお父さんは、仕事忙しく

小さい時から小学生3年になるまで

娘と余り出掛けた事がありませんでした


家族旅行の計画しても

いつも、急な仕事が入り

計画も頓挫


当然

思い出の家族旅行もありません


お父さんは、そんな娘を

不憫に思い

無理に仕事開けて

家族旅行を計画しました


娘は、大喜びしました

「本当に、本当に

家族旅行に行けるの?」


「ああ行けるよ

ごめんな、今まで

ろくに何処にも連れて行かなくって」


「やったーーー!

嬉しい〜

でも

また、中止になるよの嫌だから

お父さん右腕を出して」


娘に言われるがまま

お父さんは、右腕を娘の前に出すと

綺麗な青い色の細い布を

手首に巻きつけました


「なんだよ、これは?」


「これは"輪結び"と言ってね

今、学校で、流行ってるの」


「はははぁ

そうか、お父さんの子供の時も

ミサンガとか言うのが流行ってたぞ

切れると願い叶うって」


「う〜んそれとは、ちょっと違うなぁ

この"輪結び"をすると

絶対に約束をした人は、その約束を

守ってくれるの

指切りに近いかなぁ」


「そうなのか

そんなに効果があるのか?」


「うん

絶対の効果があるの

お父さん絶対に約束を守ってね」


「分かってる

この"輪結び"かけて

約束守るよ」

そう言ってお父さんは、微笑みで

娘と約束しましたが


旅行の前日

抜けられない仕事が入り

家に帰る事が出来ず

残業することになりました


明日の旅行には

間に合いません


仕方なく

家に電話して

娘に謝りました


「ごめん

本当、ごめん

ママと二人で行ってくれないか

この埋め合わせは、絶対するから」


しばらくの間

受話器の向こうは

無言でした

お父さんは、完全に娘の機嫌が悪いと

頭を抱えていましたが

しばらくすると

冷淡な諦めに近い落ち着いた口調で

娘が喋り始めました


「...お父さん"輪結び"

あれね

今もしてるでしょ


どうして約束を守る効果があるか

教えてあげる

指切りに近いって言ったでしょう


"輪結び"には

別の呼び方があるの




"手首切り"




約束を守らないとね

ギュウって"手首切り"がしまって

いっぱい、いっぱい締めて

どんどん小さくなって


最後

手首が取れちゃうの


だから

"手首切り"」


「おいおい

脅すなよ

悪かったから

そんな、不気味な事を....」


お父さんは

娘の冗談かと思っていましたが

右手に違和感と痛みを感じ

受話器の持つ右手を見ると


手が真っ赤に充血して

"輪結び"を結んでる手首が

ギシギシと締め付ける音がしてきました


受話器が机に落ち


お父さんは床に倒れ込み

痛さ余り踠きながら

受話器から娘の声が聞こえて来ました


「約束を守らないからだよ

お、と、う、さ、ん」






ギッ     ギッギッ          ギッ      ギッ


ドサ




ぎぶあんどていく

give and take



俺は、今、何故ここにいるか

理解出来ない

理解するのを拒んでるかもしれない

病院の待合室で

頭を抱えてる


なんなんだ

あの女は


最初

付き合い始め時は

とても純朴で素直な子だと

思っていたのに


俺の好みの髪型から始まり

仕草や言葉使い

ファッション

まぁ、ここまでは理解出来る

そのうち

顔を身体の整形して来た


こいつは、狂ってると

感じはじめ


別れようとしたが

女は、許さなかった


毎晩の電話とか

俺に付き纏う

ストーカーの様に

コソコソなら分かるが

当たり前の様に目の前に現れる


そして

本気じゃなかった

まさか、そこまですると思わなかった

つい

俺の口から出てしまった

「俺の事を愛してるなら

死んでみろよ」


女は、その事を言われるのが

分かっていたのか


右手で鞄から

カッターナイフを取り出し


躊躇無く

カッターナイフの刃の先端を

左手首静脈に突き刺した


カッターナイフの刃で

手首を引くんじゃ無く

突き刺した



確実に死を意識した行為

右手のカッターナイフを

グリグリと回し

左手首から血が溢れ出し

最後

カッターナイフを立てまま引いた


噴水の如く溢れ出す血


女は、崩れ倒れながらも

笑っていた


俺は、直ぐに

救急車を呼び

今、女は緊急手術をしてる


何でこんな事に

あの女のそばにいたら

俺の身が危ない

これからどうする?


逃げよう

今直ぐにでも引っ越し

あの女の来れない場所へ


近くを歩いてる

看護師に女の容体を聞いたら

手術は、もう直ぐ終わりそうで

命に別状はないが

1週間ばかり入院するみたいだ


看護師に

彼女の生活用品とか

持って来ます。と嘘を言い

病院を飛び出した


1週間もあれば

引っ越しは、間に合うと思った

俺は、甘かった

自宅に帰らず

そのまま逃げれば良かった


自宅の居間で

青い入院服を着た女が

俺の目前に立っている


終わった

これでお終いだ

そう思うと何故か諦めと言うのか

冷静になれた


俺は、思った

何でこんなに俺に執着をするのか?


女の答えた


「貴方は、私の理想の人

何もかも、私の理想と一致したの

だから

私も合わせて

貴方の理想の女になろうとした

それだけ


この世は

give and takeよ

そうでしょ?

今度は、貴方の番」


女の右手には

カッターナイフが握ってあった

それを俺に差し出し

こう言った


「死んで」